神部勝之の会長交遊録
~ 取締役会長 神部勝之の交遊録です ~
第24回
存在の自覚(1)
~とある居酒屋での会話~
社員「この刺身旨いっすねぇ~!」
私「ホント旨い、幸せだね~」
社員「幸せですけど、昔から悩んでいる事もあるんですよ」
私「どんな悩みなの?」
社員「ちょっと重いですよ」
私「皆そう言うよ」
社員「僕は、何でこの世界にいるのか分からないのですよ。何のために自分はいるんですかね?」
私「そりゃ、いい悩みだ。もう一杯行こう!」
<乾杯>
私「でもね、自分が何故この世にいるのか?という悩みには大前提があるんだよ」
社員「??」
私「それは、自分がこの世に存在しているという“自覚”が前提になっているんだよ」
社員「そりゃ、そうですよ」
私「で、この“自覚”こそが、VRにとっての問題であり重要なのだよ」

と言う事で、今回は、VRでの問題の1つである「自分の存在の自覚」について書きます。
VRとは、「コンピュータの中に仮想世界を作ってそこに人間が入り込み何かしらのアクションを起こす」
というのが定義になっています。
仮想世界に入り込むためにHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を頭に被ります。(写真1)
そこに“仮想世界を見る事はできますが、自分がその仮想世界に存在している“というのを自覚するのは難しいです。
(写真1)

(写真1)

何故なら手を前に伸ばしても自分の手は見えません。(写真2)
(写真2)

(写真2)

日常生活で、何気なく手や足が見えているから「あ、自分がいるんだ」と無意識に自分の存在を自覚しているのではないでしょか?
その当たり前の風景が無いと自分の身体を自覚できないかもしれません。

もちろん、CGで自分の手や足を表示する事はできますが、自分の手や足のように動かすのは大変です。
特に指などは繊細に動くのでそれを反映するのは難しいです。

この問題を堅苦しい言い方をすると「VRにおける身体性の認知問題」となります。
この問題を解決するVRを「身体性VR」と言ったりもします。

「身体性VR」の1つの成功事例がマルチスクリーンによるVRシステムです。(写真3)
(写真3)

(写真3)

体験者は素通しの立体メガネをかけるので仮想世界を見ながら自分の身体全部をそのまま見る事ができます。
目の前に自分の手が見え、下を見れば自分のお腹や足が見えます。
勿論、仮想世界と現実世界の座標系は合わせておきます。実寸で仮想世界を体験するためです。
こうなると仮想世界に自分が存在しているとの自覚を持ち易くなります。(写真4)
(写真4)

(写真4)

写真3,4は仮想世界に作られたリビングやキッチンを体験しているものです。
このVRを体験しに来たお客様の中には、歩き回る際、いつもの日常生活のようにカウンターに手を突いて方向転換しようとしてよろけてしまった事があります。
(実際の空間には、カウンターはありませんから)

というようにマルチスクリーンVRだとかなりその世界に自分が入り込んでいる自覚を持つ事ができます。
が、“本当“にその世界に自分が「存在している」という自覚までにはなっていません。
どうすれば”本当“にこの自覚を持てるのか?これからもいろいろ思考錯誤して行きたいと思っています。

「いや~、いくら頑張っても本当に仮想世界に入り込む自覚なんてできないよ」
とおっしゃる方もいると思いますが、全く不可能か?というとそうでもないのです。

何故なら我々はこの現象を確実に知っているからです。
人間が仮想世界で明らかに自分の存在を自覚している現象を・・・。

それは、「夢」です。
人は夢を見ますが、その時は、何の疑いもなくその世界に自分がいると自覚しているのです。
私は夢の中でよく空を飛んだりします。何の疑問もなく飛べるのが当たり前だと夢の中で思っています。
皆さんもそういう経験がありませんか?
お手本があるんですから出来ない事はないでしょう。
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