私達が会社を始めた時、スポンサーや顧客などありませんでした。
勿論お金もありません。ただ「立体映像は、ニーズがある。」との思い込みだけが財産でした。前回の交遊録で最初のオーダーについて書きましたが、同じ調子でどんどん立体映像が売れはしませんでした。
(立体映像が売れ始めるのは、この1年後なのです。)

 これでは、せっかく作った会社が倒産してしまう、何とか稼がなければ・・・・。とせっぱ詰まって皆で考えたのが「特許を取って儲けよう!」だったのです。私を含めて全社員6人の会社ですぐに金を稼げるのは、何らかの特許を取ってそれを売るのがよいとなったのです。
今から考えると、何と短絡的で無謀な計画だったのでしょう。冷や汗が出る思いです。ということで、毎週月曜日の午前中に特許会議を開く事になったのです。各自10案を持ってくるのが規則です。これはしんどかった。会議では、各自が1件づつ皆に自分の案をプレゼンするのです。全部で60件!どうしようもないものばっかりでしたが、全員それぞれ真剣でした。

 技術のS君が考えた「人肌キーボード」は実感がこもっていました。ソフトを開発する時はいつもキーボードを打っているが味気無い、キーが柔らかい人肌のようだと感性的に仕事がはかどるのではないか?という発想から生まれたアイデアでした。このプレゼンを聞いたAさんは、「それはいい!ノーベル賞もんだ。でもキーは少し丸くした方が、オレはいいな」とニヤニヤしながら人差し指と親指をこねまわしていました。当然却下。何回かの会議で、これは行けるんじゃないか?という案が2個出ました。それは、「カードキー」と「多機能ドライバー」でした。 残念ながら2つ特許を出願するお金がなかったので「多機能ドライバー」だけ出願して工具店などに売り込みにいきましたが売れませんでした。なので申請もしませんでした。あれから18年がすぎ「カードキー」、「多機能ドライバー」などが普通に売られているのを見ると感慨深いものがあります。
 さて、不思議なのは、私のアイデアが未だ商品化されてないことです。私のアイデアは、「マルチビン持ち機」。これは楕円形をしたゴムボールのような物に8本ぐらいの管がぶらさがっているものです。管の先にタネがあります。何に使うのか? 居酒屋さんなどで使うのです。宴会などで空いたビール瓶を何本も運ぶ時、まず管をビール瓶にさします。そしてボールの部分を握ると中の液体が管を通って管の先の風船をふくらますのです。中の風船が膨らみビンを持ち上げる事ができます。これで片手で8本、両手で16本のビールビンを持つ事ができるようになるのです。私は結構自信を持っていたのですが、特許会議では、笑い飛ばされて却下されました。この文章を読んでいる方、誰か商品化してみませんか?