今年3月、恩師である谷口先生と和田先生が定年退官されるにあたって
最終講義が開かれる。 というメールが大学時代の友人から来ました。
私が出身大学の名前を言うと皆が「え〜!嘘ぉ〜」と叫ぶのであえて名前
は出さないですが、四谷駅の前にあるJ大学です。
さらに、私が ここの数
学科を出ていると言うと、また「え〜! 嘘ぉ〜」となります。
私の外見、発言からとても数学家(?)には見えないようです。
という事で30年ぶりに教室に行き講義を聞いてきました。
さすがに最終講義なのでかなりな人でした。
内容は↓です。

   
   

15:00 〜 16:00: 谷口 肇 「一様収束について」

16:30 〜 17:30: 和田 秀男 「整数解を求めて」
   
   

この講義の中で和田先生がどうして数学者を目指したかというお話をされた
のです。
和田先生は整数論で有名な先生で、あの「フェルマーの定理」が解
けたとニュースに なった時も新聞社からコメントを求められていました。

       

さて、ここからが本題です。

 
和田先生は、高校時代の初めは物理が好きで、大学も物理学科に行きたいと思っていました。 ところが物理の勉強が進んで行くうちに“根本のしくみが未だ明解になっていない(?)なのに、さまざまな方程式とかは体系的に存在して いる。
そんな事を考えるようになったそうです。
この“根本のしくみ”とはいったい何の事でしょう?
   
電気の+と−は引き合うと言うが、その引き合う力そのものはいったい何なのか?
       
   

磁石のNとSは引き合うが、その根本の力はいったい何なのか?
物質と物質は引き合う(万有引力)がその根本の力は何なのか?
という問題でした。 こういう疑問に答えてくれる人がいなかったそうです。
“根本のしくみ”が明確になっていなくて、「磁石のNとSは、引き合うものなんだ 。」
「物質と物質は、引き合うものなんだ。」と考え、その上にさまざまな法則が体系化
されているというわけです。
和田先生は非常に純心だったようで、そういう未解明なモノが根本にあるのがどうも
性格に合わなくて、数学の道を選んだ、とおっしゃったのです。

       
                       
             
「和田教授の最終講義風景」
 
   
私はこの一連の話を聞いて「がーん!」とショックを受けました。
なるほどその通りだ、磁石のNとSが引き合う事は習いもしたし、
目の前でその現象を何度も見ている。しかし、何で引き合うのだろう?
とこの年になるまで考えもしなかったのです。
単純にNとSは引き合うものなんだ、と納得していたのです。
 
   


普段当たり前だと思っている事も、何でそうなってるの?という疑問を持つ事
でモノの真理を発見することがあります。「ニュートンは、りんごが木から落ち
るのを見て万有引力の法則を発見した」と子供の頃よく聞かされました。
普通の人は、りんごが木から地面に落ちるのは、当たり前でありそのまま見
過ごします。湯船からこぼれる水を見ても当たり前に見過ごしますが、アルキ
メデスは浮力の原理を発見しました。

       
     



ビジネスの世界でも同じ事が言えるのかもしれません。
当たり前の事を当たり前だと思ってやり過ごす人とそうでない人がいるのです。
分かってはいるのですが、どうしても目の前の事象を当たり前の事として見逃し
てしまいます。特に年を取るとそうなるのかもしれません。
授業が終わっての帰り道、初心に戻って「何でだろう?」という探究心を大切に
しようと考えていました。
33年ぶりの授業は計らずも有意義なものとなりました。

和田先生、谷口先生、長きに渡る教員生活お疲れ様でした。